代官山美容室 荒川静香「震災1年半の今、できること」
東日本大震災から1年半が過ぎた。まだまだサポートが必要なことはたくさんある。
目の届きにくい動物の支援などについて、トリノ五輪金メダリストでプロフィギュアスケーターの
荒川静香さんに語ってもらった
「震災直後に向かった先は、宮城県動物愛護センターです。幼いころの思い出の場所でした」 高校卒業まで宮城県で育った荒川さん。東日本大震災が起きた直後、荒川さんは救援物資を携えて故郷に向かった。避難所などに加えて荒川さんが訪れたのが、宮城県動物愛護センター。まだ電気もガスも通らず混乱した時期に、荒川さんの頭に浮かんだのは動物たちのことだった。「飼い主とはぐれた犬、避難所で飼えなくて連れてこられた犬たちが、ケージの中でおびえていました。でも、ここにいる子たちはまだ幸せだとも気づきました。例えば、福島の立ち入りできない区域にいる動物たちのことを考えると胸が傷みました」。
実は荒川さんにとって、宮城県動物愛護センターは思い出深い場所。ペット禁止のマンション住まいにも関わらず、犬を飼いたいと切望した10歳の荒川さんを、両親はこのセンターに連れて行った。保護された犬と遊ぶ時間を利用するためだったが、そこで荒川さんは保護犬が殺処分される現実を知った。「子どもだった私にきちんと教えてくれた両親に今は感謝しています」。その体験が、生き物の命を大切にする荒川さんの原点となった。
そばにいてくれるから、がんばって来られた
愛犬のティラミス、ローザと。「動物を飼うことは、大きな責任も伴います」(撮影協力:グランドプリンスホテル新高輪 カフェ・エーデルワイス〈テラス席〉) 荒川さんの熱意に押され、一家はわざわざ一戸建てに引っ越して、犬を飼い始めた。以来、犬と一緒に人生を歩んでいる。「練習で疲れて帰っても、寄り添ってくれるだけで心が救われる。犬がいるからがんばって来られました」。現在は4匹の犬と暮らす。
トリノ五輪金メダルの記念に飼ったのが、カニンヘンダックスフンドのティラミスだ。だが飼ってすぐに若年性の白内障で1年以内に失明すると診断された。「ペットショップに伝えたら『同等の犬とお取り替えします』と言われ、ショックを受けました。商売だとしても動物をモノとして扱うのはとても寂しい。売れ残った犬は施設に持ち込まれ、殺処分されます。震災は天災ですが、これはなんとかできるはず。施設に保護される犬をゼロにしたい」。
荒川さん自身は「犬貯金」をしている。「毎月定額を貯金しておけば、いざ手術費20万円と言われても安心。自分が先に死んでも『この犬には貯金があります』となれば、誰かに引き取ってもらえる可能性も高まります」。
苦しんでいる人たちの役に立ちたい
命を尊重し、以前からチャリティ活動に熱心だった荒川さん。「東北育ちなので役立ちたい」と震災復興の取り組みを続けている。現在はある雑誌で、被災地の農家を応援する連載記事を発信しており、現地にたびたび足を運んでいるという。「風評被害などに苦しみながらもがんばっている人がいることを伝えたい。私一人では大きなことはできませんが、積み重ねれば大きな力になる。どんな小さなことでも、まずは行動するようにしています」。
被災地で保護された犬たち(C)ONE LOVE プロジェクト<div class="bplead">東日本大震災発生後に被災地で保護された犬たちの写真。荒川さんが活動趣旨に賛同して協力している、
殺処分犬の減少を目的とした動物愛護啓発イベント「ONE LOVE ウォーク2012 in Tokyo」